with
蓮沼執太(音楽家)、ユザーン(タブラ奏者)
around
四条~鴨川~岡崎〈京都市〉

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街を観察しながら散歩するこのコーナーに、
コンサートで京都にやってきたおふたり、蓮沼執太さんとユザーンさんが登場です。

もじゃもじゃ頭のユザーンさんは名うてのタブラ奏者。
そして、音楽家の蓮沼さんは、おおいに歌うポップアルバム『メロディーズ』を発表したばかり。
大活躍中のおふたりだけに、東京を離れて国内外のさまざまな場所を訪れる機会も多いそう。

それでは、前夜のコンサートの会場となった「京都芸術センター」前からスタートします。
散歩の制限時間は2時間。やっぱり歩きながらだと、いつも以上に会話に弾みがつくようです。

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蓮沼執太
1983年、東京生まれ。音楽作品のリリース、蓮沼執太フィル/チームを組織して国内外でのコンサート公演、コミッションワーク、映画、舞台 芸術など、他ジャンルとのコラボレーションを多数制作する。アルバムは、最新作『メロディーズ』の他に、蓮沼執太フィル『時が奏でる| Time plays – and so dowe.』、『CCOO |シーシーウー』など。「音的| soundlike」(2013、アサヒ・アートスクエア)などの個展も。
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ユザーン
1977年、埼玉・川越生まれ。インド音楽の演奏やさまざまなアーティストのコンサート、レコーディングに参加。2014年、ソロアルバム『Tabla Rock Mountain』を発表。2016年GWに公開予定のドキュメンタリー映画『マンガをはみだした男~赤塚不二夫』のテーマ曲をタモリとともに、劇中音楽は蓮沼執太とふたりで担当。

#01

路地奥の店/自転車で鼻歌/アーケードの色/トマト天

ーおはようございます。さっそくですが散歩を始めましょうか。

蓮沼:その前に、ちょっとコンビニ行っていいですか。

ユザーン:なに? ヘアワックスを買うの? ヘアワックスよりもヒゲ剃ってくれば?

ーラップ?

蓮沼:(ラップで)♪ヘアワックスよりも、ヒゲ剃ってくれば! って?

ーさすが(笑)。今回、蓮沼さんは京都に3日間いたんですよね。なにか美味しいもの食べました?

蓮沼:そうですね。でも、行きたかった串揚げ屋には行けなかったんですよね。

ーこのあたりはレストランもたくさんありますが、どんなお店が気になります?

蓮沼:うーん。気になるお店ってわりと路地の奥にあったりしますよね。でも、いきなりは入りづらいし、失敗したくないので、地元のひとに教えてもらったり。そういえば、あの三条の近くのお店にワイン飲みに行きましたよ。

ー「Bar K6」? 2階の。前に行きましたね。

蓮沼:そうそう。

ユザーン:執太は普段ぜんぜん歩かないから、早速、歩き疲れてきたでしょ?

蓮沼:そんなことないよ(笑)。とにかく、ちょっとコンビニに行ってきますね。

ーユザーンさんは京都によく来られます?

ユザーン:猛烈に来てた時期はありましたけどね。ハラカミさん(音楽家のレイ・ハラカミ)の家に1週間くらいいたり。

ーそれはもう居候ですね。(蓮沼さん、コンビニから戻ってくる)蓮沼さんはここ数年、京都によく来られてますよね。

蓮沼:そうですね。去年だと『PARASOPHIA』(*15年に初開催された京都国際現代芸術祭)を見に来たり。あのときは自転車でぐるぐる街を回って。会場があちこち離れていたから、自転車にちょうどよかったですね。

ー京都の中心部は坂もないし、自転車サイズの街だとよく言われます。

蓮沼:東京は坂が多くて人が多いから。けどチャリはよく乗ってますけどね。

ー自転車でぶらぶら?

蓮沼:ありますよ。駅から家に帰る時はチャリに乗りながら鼻歌を歌ったり。

ーお気に入りの鼻歌は?

蓮沼:自分で作るんですよ。それでメロディが浮かぶみたいなことはありますね。

ー「メロディーズ」が出てくる、と。

ユザーン:あ、この商店街に入りたい。いいですか?

ー「錦市場」ですね、入りましょう。市民の台所、というより今では観光スポットですね。

ユザーン:このアーケード、超かわいいね。

蓮沼:目の付けどころが、さすがユザーンだ。

ユザーン:俺、別に派手な色さえ付いてたら喜ぶってわけじゃないから。このアーケードの屋根の色合いはさ、古いブラウン管のテレビに顔を近づけたときに見える、あのカラーリングみたいな感じですごくいいよね。

ー八百屋には京野菜が並んでますね。

ユザーン:(大きな聖護院大根を手にし)これ欲しいな。でも、昨日のライブの主催者に「ちょっと持ちきれないんで」って、自宅へのタブラの郵送をお願いしておいて、こんな大きい大根を持って帰るのはどうなんだろ?

蓮沼:怒られるよね。

ユザーン:そうだよね。あー、この九条ねぎも超いいな。東京のスーパーで売ってるのとレベルが違う気がする。みんな美味しそう、野菜が。

蓮沼:(インタビュアーの口調で)えーっと、ユザーンさんはこれまでいろんなところにツアーで行かれてると思うんですが、現地で散歩はされるんですか?

ユザーン:タイミングがあればね。でも本格的な空き時間があると、カラオケボックスとかスタジオへ行って、タブラの練習してるかも。ツアー中は移動してる時間が長くて練習できないからさ。でも、30分とか少しの空き時間だったら散歩することもある。

蓮沼:なるほど。仕事で来てると、散歩とか、そういう観光モードにはあんまりならないですね。

ユザーン:執太、こういうの食べれば?

蓮沼:それじゃ、このトマト天ください。

ユザーン:俺もそれ狙ってたんだけどな。それじゃ、ネギ生姜天を。

蓮沼:そういえば、高校生のときに、友達と京都に来て散歩しましたね。

ユザーン:高校生で友達と京都に!? オレはそんな人生送ってないわー。

蓮沼:あ、美味い。こんなのが身近にあって幸せだね、京都のひとは。

ユザーン:そうだね。こっちの鱧の照焼もいただきます。

蓮沼:お酒に合うだろうねー。

参道のルール/フィールドレコーディング/置き網漁/食事するときのBGM

ー錦市場の突き当りは錦天満宮です。ちょっとお参りしていきましょうか。

ユザーン:ちょっと蓮沼さん、鳥居の真ん中を通ってはいけないんですよ。

蓮沼:すいません。

ユザーン:はじっこを通らないといけないんです。昔、習いました。

蓮沼:すいません(笑)。

(蓮沼さん、お賽銭を入れ鈴を鳴らして参拝)

ユザーン:(小声で)さっきの鱧は「持ち合わせがないから」とか言って僕に買わせておいて、お賽銭はしっかり自分のお財布から入れるという。これは蓮沼さんらしいところが出てますよ。

ー(笑)。蓮沼さんは一昨年ニューヨークで暮らしていましたが散歩してましたよね?

蓮沼:ご存知の通り、歩き回ってたでしょ? やっぱり街を観察するのは、散歩がいちばんいいですよね。サンダルで歩きまくったなぁ。サブウェイも発達してるけれど、京都に似てるとこもあって歩きやすい街だし。

ー京都もニューヨークも街路が碁盤の目になってるところは同じです。散歩でアイデアを得たりとかも?

蓮沼:力を入れて、なにか発見してやろう! という時は何もなくて。例えば、フィールドレコーディングで音を録ってるときでも、良い音はないかな?って歩いているより、ふつうに散歩してる時に、うわ、面白い音だ、って、そこから録りはじめることが多いですね。その方が自然。

ーなるほど。

蓮沼:きれいなサウンドがあるからそこに録りに行く、ということもあるけど、ぼくの場合は録りに行く、というより、録音機材を置いておいて、後で聞くと面白い音が録れていた。そういうことの方が多いんですよね。

ー置き網漁みたいなやり方ですね。

蓮沼:たとえ自分の耳で面白い音を見つけて録ったとしても、機材より耳の解像度の方が圧倒的に高いので、聞こえてるようには録れない。でも、その違いの発見もいいしね。記録ってそういうものだと思いますね。

ー街の音で気になるポイントはあります?

蓮沼:ほんとに気になるのはBGMですね。京都は違うけど、渋谷とかだと派手なEDM(*ダンスミュージック)がかかってたり。あと気になるのは、そば屋でジャズ。

ーありますね。

蓮沼:あれはほんとによく分からない。食事するときのBGMは、特に気になりますよね。昨日、ユザーンとランチを食べた京都のお店は無音だった。いい店だなーと思いましたね。

ー無音の店、あるようでなかなかありません。

蓮沼:(無音のお店だと)食べることに集中したいし、一緒に食べてるひととの話に集中したいってことですね。

ユザーン:家にいるときだと逆に音楽かけるけどね。

蓮沼:家はいいけどね。その環境なんだよね。BGMは、箸の形、器の大きさとかと同じ。

 

文:中村悠介 写真:原祥子 編集:竹内厚

→蓮沼執太さん、ユザーンさんとの「さんかつ#02」
次回は四条通りから鴨川のリバーサイドを歩きます。え、ユザーンって顔洗わないの? どうぞお楽しみに。


散歩と観察とは

デザイナー、アーティスト、建築家といった、独自のまなざしを持つ方々といっしょに町を歩きます。お題は、パブリックなモノやコト。公園、ベンチ、駅、図書館、路地、空き地、看板などなど、その観察眼はどこへ向けられるでしょうか。