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蓮沼執太(音楽家)、ユザーン(タブラ奏者)
around
四条~鴨川~岡崎〈京都市〉

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京都の街中から、観光地でもある岡崎へ。最後は、蓮沼さんの新作『メロディーズ』のこと、公共の場でのライブの話などもお聞きします。

#03

店に並ぶ行列/公共性という言葉/野外のいい感じ/練習にあたるようなこと

ー岡崎を流れる白川沿いを歩いています。

蓮沼:こういう小さい川をちゃんと残してるところがいいよね。東京だと埋めて道路にしてしまいそう。

ー川に橋がかかってますよ、せっかくなので渡ったら?

ユザーン:あー怖い、怖い。もしこの橋を通らないと家に帰れないんだったら、もう路上で寝るね。こういうのが年々、怖くなってきてる。

ーそうなんですね(笑)。そうこうしてるうちに、平安神宮に着いてしまいましたね。

蓮沼:着物のひとがけっこういますね。

ーユザーンさん、平安神宮から何か感じます?

ユザーン:ぜんぜん何も感じない。ここに限らず、どこでもなんにも。もちろん、おごそかで素敵な場所だなとは思うんだけど。たぶん、磁場の力みたいなものに、残念ながら少し鈍感なんだよね。執太はわかるんでしょ。

蓮沼:霊感が強いとかじゃないけどね、気が変わる感じはあるかもね。

ー最後にどこかでお話を聞かせてください。「龍門」行きますか。

蓮沼:えー、ここすごい行列。なに?

ー有名なうどん屋さんですね。

ユザーン:遊園地のアトラクションを待ってるみたいな感じだね。

ーその行列店の隣りが「龍門」岡崎店です。

蓮沼:なに食べようかな。小龍包かな。

ーひとまず、おつかれさまでした(乾杯)。蓮沼さんの新作『メロディーズ』、久しぶりのソロアルバムですね。

蓮沼:ダンスとか演劇とか、しばらく主体が音楽じゃないものをやっていたので、これからは自分の音楽を作っていこうと。自分の芯というか。まぁ、日々、新曲は作ってはいたんですけど、曲を残していこうという意志ですね。でも、あらためて自分のアルバム制作には時間がかかります。その分、自信作です!

ー蓮沼さんはポップミュージックの大衆性とか公共性についてどう思います?

蓮沼:ポップミュージックは現在性がたっぷりつまっている音楽ジャンルなので、当然、大衆的なものですよね。そのときの流行や社会情勢だって音楽の中に入っていると思います。

ーなるほど。『メロディーズ』は歌える、ように聞こえるけど、これが実際に歌ってみると難しかったりします。

蓮沼:難しいというよりも、そもそも自分の声や歌唱には限界があるんですよね。音域だったり質感だったり。その限界の中で作曲していくのは面白かったりしますよね。

ーユザーンさんも今作に参加されてますね。

ユザーン:大変でした。蓮沼さんの望む音のハードルが高くて。

蓮沼:忙しい合間をぬって、レコーディングに来てくれてね。

ユザーン:ねー。っていうのはすべて冗談で、実際のところ、別の映画音楽用に録ったタブラの音を、これいいなって言って執太が勝手に使っちゃっただけなんだよね(笑)。

ー昨夜のコンサートで披露された、蓮沼さん作曲の「5台のタブラのためのソナタ」はいかがでした?

ユザーン:タブラの構造を理解して作ってくれてるのがうれしかった。そんなことをしてくれる人はなかなかいないから。でも、執太はみんなが思っているような器用なミュージシャンじゃないと思いますよ。

ーどういうことです?

ユザーン:彼の音楽の語法そのものにオリジナリティがあって、優れているから、どんなところでも通用してるっていうことですね。それが器用に見えてるのかもしれないなとは思う。

ー蓮沼さんは屋外や美術館など、いろんなところで演奏されています。空間の公共性ついて、どう考えます?

蓮沼:うーん。公共性という言葉は、僕は普段、使わないですね。他人のことを想ったり考えたりすることから始まるのが公共的考えだと思いますけど、「公共性」って文字を見るとポジティブな印象を受けないですよね。なんででしょう。

ーわざわざ「公共の」と言われることの不自然さはありますね。

蓮沼:そういえば今、思い出したけどアルバムの宣伝企画で「お散歩試聴会」というのをやったことがあります。イルリメさんや(坂本)美雨さんと。ただの試聴とか、そういうのはあんまり面白くないなと思って、ザ・公共の場、公園で音源を聴きながら散歩しました。パブリックスペースですね。

ー散歩の札幌駅の地下通路でもコンサートをされてました。

蓮沼:札幌って、イサムノグチなどのパブリックアートが街なかにも多くあるし、芸術祭も行われていて、住民のみなさんの理解があったんだと思いますね。

ーそういった場でのコンサートは、いろんなものを交差させるダイナミズムがありますね。

蓮沼:とはいえ、音楽を演奏する場所はコンサートホールやライブハウスの方が音楽的にはいいに決まってますよね。ふだん音楽が起こらないところでやるのはすごく大変なこと。どこにスピーカー置くのかとか、周りの環境も把握する必要があったりね。なので、エゴを捨てないといけない場面もありますよね。

ーそこでどんなことに気をつけていますか?

蓮沼:すごく気をつけているのは、できるかぎりオーディエンスが全員、同じ音環境にしたいということです。野外コンサートだったりすると、野外特有の開放的な音のいい感じ、っていうのはありますよね。

ーその場所性に甘えることなく。

蓮沼:そうですね。ユザーンは外で練習したりしないの?

ユザーン:何年か前、時間が余ったときに札幌の大通公園ってところで練習したな。通りかかった人から、これ、何かの撮影してるんですか? って聞かれたりしたね。

ー鴨川でも楽器を鳴らしてるひとがいますね。練習以上、ストリートライブ未満というような。

ユザーン:へー。執太は練習は…そもそもしないのか。まあ、演奏家というより作曲家だものね。

蓮沼:練習にあたるようなことはなにか毎日やってるとは思うんだけどね。作品のアイデアを考えたりとかさ、まあそれも思考の練習だよね。

ユザーン:いやー、それにしても食べ過ぎたな。これ、面白いやきそばだね。この海鮮やきそば。

 

文:中村悠介 写真:原祥子 編集:竹内厚


散歩と観察とは

デザイナー、アーティスト、建築家といった、独自のまなざしを持つ方々といっしょに町を歩きます。お題は、パブリックなモノやコト。公園、ベンチ、駅、図書館、路地、空き地、看板などなど、その観察眼はどこへ向けられるでしょうか。