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武田重昭(緑地計画学)
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金剛~富田林〈大阪・富田林〉

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金剛駅前の団地群を抜けて、北の高台へ。すると再び団地に遭遇ー!

ブラジリア/NSペア/コミュニティスペース/ビワの苗木

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―富田林の町がこんなに起伏があるとは思ってませんでした。

武田:そうですね。だけど、こういった地形があるってすばらしいなと思います。設計する側も地形という拠りどころがあったほうがつくりやすい。ブラジリアなんてほんとにつまらなくて。上から見たり建築群を眺める分にはすばらしい、世界遺産なんですけど。

*ブラジリア…1960年、何もなかった荒れ地に作られた、ブラジルの首都。 

―20世紀の計画都市がもう世界遺産なんですね。

武田:そう。だけど、生活者としては最悪ですよ。車での移動は機能的に考えられてるけど、歩行者の動線は配慮されてないので、みんな獣道みたいなところを歩いてたり、超高層の足下にある芝生広場にテントを建てて物を売ったりとか。まあ、近代的なのか何なのかよくわからない暮らしが生まれてるという点ではおもしろかったですけど。

―…とまた団地が見えてきましたよ。団地群を抜けたと思ってましたけど、まだニュータウン内でしたね。

武田:おっ、この団地は「NSペア」かもしれない。見ていきましょう。

―NSペアとは、北(North)と南(South)がセットになっている団地、つまり…

武田:普通は団地の北側に入口と階段室を設けて、南側はバルコニーにしますけど、NSペアは北入りの団地と南入りの団地を平行に配置して、その間がコミュニティスペースになってるんですね。

―団地の出入口が向かい合わせになってるから、その間で住民同士が顔を合わせることになると。

武田:NSペアって、僕はすごく挑戦的だったと思います。建築設計と屋外設計をいっしょにして、トータルで住まいの環境を考えようとしていますから。

―住まれてる方ってこの空間の意味にどれくらい気づいてるんでしょうね。

武田:うーん、どうだろう。でもやっぱり、普通の住棟の間にある空間とは違うってことは意識にのぼると思いますよ。

―あ、でも、確かにちょっと空気が違う感じがします。むしろ、その団地に暮らす住民でないと入りづらいような、ひとの家感覚が強まってるのかも。

武田:それもあるかもしれません。

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―このNSペアという型は減ってますか。

武田:そうですね。南入りの住棟ってやっぱりあまり好まれなくて、南側に階段室をつくると、どうしても住戸内の南向き面積を減らすことになりますから。

―そうか。いち住棟の南側の部屋を減らしてまで、住棟間のコミュニティスペースをつくったと思えば、NSペア、確かに挑戦的ですね。

武田:まあ、間につくったスペースを後から駐車場にしてしまったところも多いので、なかなか難しいところです。けど、ここはテントみたいなのも建ってていいですね。

三上:井戸端会議スペースのような椅子も置かれてますよ。

武田:自然発生的にそういう形で使われてるとしたらすばらしいですね。

三上:…あれ、こっちにはビワが増えてますね。

武田:苗木を生産して、大きくなったらまたその横に植え替えているのかもしれません。

―すっかり大きく育ったビワの木もあるから、そのようですね。

武田:公団住宅ではこれはルール違反なので、やってはダメですね(笑)。

タウンハウス/津端修一/人間のユートピア/ランドスケープ

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―金剛駅からもう1時間くらい歩いてますけど、まだお店をほとんど見てませんね。とにかく、住宅街を巡る感じに。

武田:おもしろいですけどね。やっぱり歩くと、町の雰囲気がにじみ出ているというか、その町のことがよくわかりますよ。

―よく散歩はされますか。

武田:仕事柄、いろんな土地に呼んでもらうので、そういう機会があれば時間を見つけて町を歩くことはわりとやります。いま歩いてるこのあたりも、坂を上がったり下がったり、ぐにゃぐにゃの道を歩いてるような気になってますけど、きっと地図で見るときれいな幾何学的な道になってると思います。実際に歩かないとそういったことはわからない。

―いい感じのお家が見えてきました。

武田:いいですね。これも団地っぽいですけど。

―これも団地と呼ぶんですね。

三上:ここは、UR分譲のタウン高辺ですね。

武田:タウンハウスは、戸建てがつながった団地です。ちゃんと共有空間もありますし、住むにはいいですよ。

―…と今度は、歩道の真ん中に長い柵が続いてます。

武田:これはすごい、どこまでもずっと囲われていて、まったく入れなくなってますね。

―石垣から上の斜面を登ってもらいたくないってことでしょうか。

武田:そうなのかな…。

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―武田さんがURから博物館、大学に移られたのはどうしてなんでしょう。

武田:まちづくりという意味ではURの仕事のほうが近いんですけど、究極的には人をつくることがまちづくりにつながると思ったからです。URというか、公団時代の大先輩で津端修一さんという方がいらっしゃいます。津端さんは高蔵寺ニュータウンという、愛知県の大きなニュータウンを設計した方で、そこが完成したときに、これは技術のユートピアではあるけど、まだ生活のユートピアじゃないという反省をされて。そこで、ご自身で高蔵寺に住まわれて、キッチンガーデンをつくったりだとか、暮らしの豊かさを研究しながら、情報発信をされてきたんですね。

―そんな方が公団にいらっしゃったんですね。

武田:昨年、お亡くなりになりましたけど、生前、何度かご自宅を訪ねたことがあります。今朝採れた野菜のサラダでもてなしていただいたり、実際にすごく豊かな生活を実践されていました。こういう人が多い町ほど魅力的になるんだってことですよね。僕が教えているランドスケープという分野は、ただ自然空間を考えるということじゃなくて、生き方やコミュニティに直結しているんです。そういうことを次の世代にも伝えていかないといけない。

―ランドスケープにそこまでの意味が含まれてるとは認識していませんでした。

武田:それは、大阪府立大学で教わった増田(昇)先生の影響もあると思います。増田先生の研究室からは、E-DESIGNの忽那裕樹さん、studio-Lの山崎亮さんというそれぞれに活躍されてる先輩も輩出していて、だけど芯になってる考え方があるんですね。…と話してるうちに、またタウンハウスが出てきましたよ。

三上:ガーデンハウス藤沢台第2、ここもURの分譲ですね。

―今回は、UR物件をかなり巡ることになりましたね。

武田:もっと宣伝しといてもいいんじゃないですか…って、ついOB魂が(笑)。僕は、集合住宅のよさというのは、共用スペースがあることだと思うんです。自分の家の庭よりも広いスペースをみんなで持てるということ。その集合住宅のメリットを、一番少ない世帯数で共有できるのがタウンハウスじゃないかな。

―そんなに町でタウンハウスを見かけませんけど。

武田:タウンハウスを建てた時期はかなり短いと思います。効率の面でいえばこれも非効率なので。だけど、もっと見直されてもいい。ちゃんとクルドサック(袋小路状の道路)になってるから、通り抜ける交通もなくて。贅沢ですね~。

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→武田重昭さんとの「さんかつ#03」
金剛駅をスタートしたときから、ちらちらと見かけていた白亜の塔がとうとう間近に…!?


散歩と観察とは

デザイナー、アーティスト、建築家といった、独自のまなざしを持つ方々といっしょに町を歩きます。お題は、パブリックなモノやコト。公園、ベンチ、駅、図書館、路地、空き地、看板などなど、その観察眼はどこへ向けられるでしょうか。