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武田重昭(緑地計画学)
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金剛~富田林〈大阪・富田林〉

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#03

団地のソメイヨシノ/橋の下/PLの塔/パブリックライフ

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―武田さんは好きな樹木とかありますか?

武田:難しい、それは。いっぱいあるかもしれないな。ベタな話ですけど、団地に植わってるソメイヨシノの下で、小学校の入学式に向かう親子が写真を撮っているというのは、ものすごく設計冥利に尽きますね。その瞬間のために植えたサクラなんだよと思って。

―いろんなご家庭のアルバムに貼られていそうな写真です。

武田:僕もあるんです、団地に植わったサクラの下で撮った写真が。住まいの空間にそういう場所があることって、やっぱり一生忘れられない風景になりますから。

―団地にサクラはたくさん植わってますよね。

武田:多いと思います。ただ、ソメイヨシノって寿命がだいたい60年くらいだと言われているので、団地の建て替えのタイミングで植え替えることもしています。だけど、愛着のある方からすれば「こんな大木、なんで切るんだ」という話になることもあって。

―意外に寿命が短いんですね。…と、いつの間にかPLの塔が間近に見えてきました。そして、制限時間の2時間も残り時間、あと10分ほど!

武田:とりあえず、塔の足もとを目指しましょうか。

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―今日、歩いてきたルートはほぼ住宅街の中でしたけど、このあたりはトラックがびゅんびゅんと通る府道になりました。大きなショッピングモールも見えてきました。

武田:ニュータウンなので町の機能がはっきり分かれてますよね。

―すごい場所にURの案内所がありますよ。

武田:橋の下ですね。

―PLの塔も間近くなってきましたけど、残念ながら真下までは入れないようです。

武田:こんな足もとから見たのは初めてです。意外と足もとの構造はしっかりしてるんですね。

―だけど、塔のそばまでは近づけなくなってますね、残念ながら。そして、制限時間の2時間です…。

武田:ここで終了ですか…。

―最後は、散歩するにはやや難しい道だったかもしれませんね。

武田:ニュータウンなので町がはっきり分かれてますよね。

―最後は、やや散歩には不向きな道だったかもしれませんね。

武田:「プライベートライフ」と「パブリックライフ」という考え方があるんですけど、日本という国は、世界でも最裕福と言ってもいいプライベートライフが実現していると思います。室内は、たとえばカーテンの色ひとつとっても自由に選ぶことができる。だけど、パブリックライフに出た瞬間に世界でもかなり貧困な国で、公共空間があんまり楽しくない。

―それは実感としてわかりますね。

武田:アジアの諸都市で見かける公共空間の方が、よほどいきいきとして楽しそうですよ。それは、道路や公園といった都市の基盤施設をいかに配置するかを中心に、日本の都市計画が考えられてきたから仕方のないことですけど、これからは公共空間をどう使いこなしていくのか、それにあわせてどう作り変えていくのかを考えていかないといけないんです。

―プライベートライフもいいけど、パブリックライフも大事よね、と。

武田:そう、たとえば今日見かけた団地のNSペアにしても、緑道の並木道にしても設計者の意図としてはがんばっている。だけどもうひとつ、利用者側がそれをどう汲み取って、使いこなせるかも大切になってくると思います。

―設計とハードでできることもある一方で、使う側でできることもありそうですよね。

武田:その手がかりとして、今日お話したピクニックのことだったり、津端修一さんの生き方だったりがあるわけです。

―最後に話がつながってきてよかった! ありがとうございます。

武田:さすがに2時間も歩くと寒さを忘れましたね。

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文:竹内厚 写真:沖本明 


散歩と観察とは

デザイナー、アーティスト、建築家といった、独自のまなざしを持つ方々といっしょに町を歩きます。お題は、パブリックなモノやコト。公園、ベンチ、駅、図書館、路地、空き地、看板などなど、その観察眼はどこへ向けられるでしょうか。