with
チチ松村(ギタリスト)
around
南森町~中崎町~梅田〈大阪市〉

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今回登場いただくのは“散歩の達人”、かもしれません。これまでに拾ったギターは数知れず、ご存知GONTITIのチチ松村さん。ユルそうに見えて、ものすごい観察眼の持ち主なのです。

この日、南森町でラジオの収録を終えたチチさんはいつもの自転車で登場。この愛車を押しつつ、まずは天神橋筋商店街からぶらりと参りましょう。

チチ松村
1954年生まれ。大阪出身・在住のギタリスト。ギターデュオGONTITIのメンバー。ガス点検などの会社員生活を経て1978年にゴンザレス三上とGONTITIを結成。関西音楽界きっての趣味人で過去にクラゲ、いか、豆などにハマる。現在の興味はサル。著作多数。

 

#01

自転車のピート/小銭の音/上は見てません/虫を見る眼/変わらない店

—チチさん、今日はよろしくお願いします。この自転車、素敵ですね。

チチ松村:ぼくはこういう鉄のブレーキしか嫌やねん。

—これは何台目ですか?

10台目。郵便局、ポストマンの自転車やから、ポストマンのPと10で「ピート」って呼んでる。

—いつも自転車に名前付けるんですよね。

そう。最初はうちのお父ちゃんが(自転車メーカーの)宮田の自転車に乗ってて、鍵の番号が5623やったから、「宮田ゴローニーサン」って呼んでてん。そこから始まって10台目。

(チャリン、とお金を落としたおばちゃんが)

あ、落としたよー。

—反応が早いですね。

音には敏感やねん。特に小銭の音には(笑)。これもいい音やろ?(とピートのベルを)♪リーンリーン

—優しい音色で気持ちいい。

やろ? もともと、この自転車は豊中の郵便局の払い下げ。今ではそんなの手に入れられへんけどね。

—「ピート」のカゴに付いているドライバーはなんですか?

チェーンが外れたとき、いつでも直せるように。

—さすが、準備万端。この天神橋筋商店街にはよく来られますか?

うん、ラジオ局もうちの事務所もあるしね。それこそ昔、ヒッピー時代の若い頃にベルボトムのジーンズが流行って。天満のジーンズショップにしか売ってなかった。

—いつくらいですか?

70年代やね。だから、高校生くらいから来てる。

—やっぱり雰囲気は変わりました?

空気感は変わらない。けど、店は変わったなぁ。(レコード店の)「DISC J.J.」もないしね。古本屋はあるけどね。

—アーケードに飾りつけられた鳥居が、途中から赤から青に変わってますね。

ほんまや、そんなん知らなかった。あ、ここはビデオ屋さんやったね。マニアックなものいろいろ置いてたなぁ。

—そういえば、チチさんはプライベートのときはサングラスを外されるじゃないですか? かけ始めたのはいつからです?

GONTITIを始めてからやね。

—なぜかけ始めたんですか?

だんだん顔を知られるようになるんちゃうか、と思って。自由じゃないやん?

—街で声をかけられたりするのがちょっと…?

そうそう。ぼくは恥ずかしい生き方してるやん? 散歩でゴミ拾ったり、ギター拾ったり。アイツ、ギター拾ってた、とか言われるやん。

—自由を求めてのサングラスなんですね。今もゴミは拾います?

やっぱり落ちてるゴミはよく見てるね。

—下の方ばかりを見て歩いてるということですか?

そう。上は見てません。ほとんど下を向いて歩いてる。

—チチさんが拾うゴミはゴミじゃないんですもんね。

宝物やね。あと、虫が歩いてるときあるやん? 虫もよく見てる。

—ゆっくり歩かないと見えないですね。

そう。散歩の速度じゃないと見えないね。でも、もともとむちゃくちゃ目がいいねん。今でも視力1.5とかあるよ。

—へー。

虫を見てるから、さらに鍛えられてるねん。

—特殊な鍛え方ですね。古本屋さんの「天牛書店」までやってきました。

ここはよく来るね。待ち合わせの時間を潰したり。ぼくは待ち合わせの時間にちょっと早く行って、ぶらぶらするのが好きやねん。それにしても、さっきから天ぷら屋さんが多いね。

—たしかにいっぱいありますよね。

今、天ぷらブームなんかな。あそこにもあるなぁ。その中にほら、こういう文房具屋さんとかには昔の雰囲気が残ってるよね。

—ほんとですね。チチさんはふだん「ピート」に乗ってぶらぶらすることが多いですか?

そうやね。

—ほとんど大阪市内ですか?

そう、いろいろ行くけど、上町筋と谷町筋は通らないようにしてる、上町台地の坂があるから。あと、ひとが多くないところを走るね。堺の方まで行ったこともあるよ。

—大阪市内のご自宅から堺まで?

大和川を越えるとしんどかったわ。それに、歳いってきたから、夏の暑いのと冬の寒いのがだんだんキツくなってきてるかなぁ。

—GONTITIは来年で結成40年ですもんね。

長いことやってるよね。あっという間やね。早いでー。やりたいことやっとかなあかんよ、40年なんかすぐ。

—決まった散歩コースってありますか?

ぜんぜんない。その時の気分次第。

—気分次第はいいですね。

行き当たりばったりが好きやね。なにに出会うかわからへんもん。知ってるところに行くのでもなるべく通ったことのない道を選ぶね。初めての道の方が楽しいやん? あ、また天ぷら屋。

→チチ松村さんとの「さんかつ#02」
次回は中崎町方面へと向かいます。チチさんが考える“風流”とは、風に流されて生きることだそう。次回はそのノリで焼き芋を食べたりします。どうぞお楽しみに。

文:中村悠介 写真:佐伯慎亮 編集:竹内厚


散歩と観察とは

デザイナー、アーティスト、建築家といった、独自のまなざしを持つ方々といっしょに町を歩きます。お題は、パブリックなモノやコト。公園、ベンチ、駅、図書館、路地、空き地、看板などなど、その観察眼はどこへ向けられるでしょうか。