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チチ松村(ギタリスト)
around
南森町~中崎町~梅田〈大阪市〉

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GONTITIのチチ松村さんと散歩です。チチさんと歩いていると、なんだか時間がゆっくりになっていくような気がします。これはチチさんマジックでしょうか。今回は中崎町の迷路のような路地に入り込んだりします。

#03

路地の喫茶店/ギター目/粗大ゴミ/店先にキリギリス

—路地に入ってきました。梅田に近いですが夕飯の匂いがしそうな町です。

チチ松村:近くに喫茶店あるから行こうか。ここ(の路地)やと思うねんけどな。

—こんな路地に?

そうそう。あー、準備中や。

—喫茶「イノ」。音楽ユニット、イノウラトモエのキーボーディストだった井上智恵さんのお店なんですね。

ここ、いいよ。惜しいな。

—また行きましょう。では、チチさんの梅田行きルートを辿りましょうか。このあたりはゴミはあんまりなさそうですね。自転車に乗りながらも見つけたりします?

捨てられてるギターは自転車乗ってても見えるねん。家まで、自転車でギター担ぎながら帰ったこといっぱいあるよ。

—そんなにギターがありましたか?

落ちてたねー。ぼくが“ギター目”になってるのもあると思うけど。

—ギター目。

昔は、粗大ゴミが山のように積んであったからね。そこでパッとギターが目につくねん。それで触ってみて。あかんのもあるよ。いけるなっていうやつは持って帰る。ほっといたら、もうゴミの車にバラバラにされてしまうからね。

—それはもったいない。

そうやねん。だから助けるわけ。

—レスキュー感覚ですね。

そうやね。

—ギターもチチさんに拾われるのは本望ですね。今も散歩中に拾うことはあります?

今は粗大ゴミ置き場自体がなくなったから、なかなかないね。

—寂しいですね。ギター目が発揮できない。

でも、家の前に紙が貼られてギターが置いてある時は、呼び鈴を鳴らして、これもらっていいですか?って一応聞いて。それでもらったりすることはあるよ。

—へー。粗大ゴミ回収用の手数料券というのが貼ってあるやつですね。

この道、よく通るんやけど、あそこに散髪屋さんあるやん?

—はい、「理容エイト」。なにかぶら下がってますね。

あそこ、夏場はいつも店先にキリギリスをカゴに入れて吊り下げてるねん。いつも夏になったら、キリギリスの声を聞くね。めっちゃ鳴かしてる。

—近所からキリギリスの店と呼ばれてそうな。

いつか、10月くらいまで鳴いてたことがあったから、どうやったらそんな長生きするんですか?ってお店のおっちゃんに聞いたよ。

—はい。

でも、とくになにもしてない(笑)。夏にここ来たらおもしろいよ。

—行ってみます。

 

手書きのTシャツ店/クスノキのご神木/自転車置き場/日替わり焦点

―中崎町に入ってきました。

あ、そういえば中崎町にむちゃくちゃいいTシャツ作ってくれるお店あるよ。手描きで。行ってみる?

—行きましょう。

あそこは最高。図鑑を持っていって、これ描いて、って。手描きでオーダーメイド。

—手描きなんですね。こんな細い路地にお店があるんですか。

あれ、この道ちょっと間違えてるかもしれん。

—迷路みたいになってきましたね。

ちょっと分かりにくい細いところやねん。うーん、ちょっと待ってな。あー、あった。

—「花音」さんですね。おじゃまします。

こんにちは。ご無沙汰です。ほらこのTシャツ見て、すごいやろ?

—すごい。まず服を選んで、自分の好きな絵を描いてもらうんですね。

かっこいいやろ。これ全部、手描きやで。ぼくはこれまでセミとサルと、なんやったかな?

(「花音」の店主さん:豆、を描かせてもらいましたね)

そうそう、豆を描いてもらった(笑)。セミは、沖縄にいるクロイワゼミを描いてもらって。

—全身が緑のセミ。こんなのいるんですね。

サルはアマゾンにいるウワカリ。このカエルもすごいな。

—クロイワゼミのTシャツもウワカリのTシャツも絶対に売ってないですよね。

売ってない売ってない。

―このクオリティで描いてもらえて7,800円! 安いですね。

めっちゃいいよ。絶対安いよ。すごい店やろ?

—路地奥にこんなお店があるなんて。お店の前には神木が植わってるのもおもしろいですね。

「白龍大神」やね。神木はだいたいクスノキらしいよ。神木を切ったらえらい目にあうのは、クスノキから毒が出るかららしい。この前、タクシーの運転手さんが言ってたわ。

—そりゃ切ったらダメですね。さて、もう梅田が近づいてきました。

梅田はぶらぶらしに来るところ。本屋さんに行ったり、映画を観たり。

―梅田って自転車だと置き場所に困りません?

それがいいところあるねん。あまり知られてないところで。

―さすがです。そろそろこの企画の制限時間の2時間です。最後に、チチさんが考える楽しい散歩の秘訣とは?

ふだん目にしてないものを見てみる、ということかな。

—あえて?

そう。虫なら虫に焦点を置いて、今日の散歩は虫でいこ、とか。日替わりで焦点を変えると毎日がめっちゃ楽しいわけ。

—視点、というものをしっかり意識する、と。

ふだんは興味があるものしか見てないわけ。でも、それを変えると毎日が変わる楽しみがある。やっぱりそれちゃうかな。

文:中村悠介 写真:佐伯慎亮 編集:竹内厚


散歩と観察とは

デザイナー、アーティスト、建築家といった、独自のまなざしを持つ方々といっしょに町を歩きます。お題は、パブリックなモノやコト。公園、ベンチ、駅、図書館、路地、空き地、看板などなど、その観察眼はどこへ向けられるでしょうか。