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梅林秀行(京都高低差崖会)

03 古墳と団地とセーヌ川!?

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洛西ニュータウンの東端から中央部を目指す、その前に、梅林さんが行ってみたい場所があるとのこと。それがニュータウン内にある遺跡公園でした。

01 はこちら
02 はこちら

歩車分離/屋根上の相輪/傾斜のある芝生/河岸段丘のすべり台/砂場の遺跡

―眼の前の市営住宅を抜けて、遺跡公園を目指しましょう。

梅林:市営住宅の駐車場は、歩道とレベル差を設けて区別しているんですね。

―もともとの地形を活かしたつくりのように見えます。

梅林:地形図を見ると、たしかにもとは河岸段丘だったみたいです。その段差を活かして、低い位置を駐車場と車道にしたんだ。

土井:ニュータウンのような大規模開発の場合でも、土量バランスといって、削った土をなるべく敷地外に持ち出さないよう調整していくので、無理できないところも出てきます。

―高低差が土手のようになって、そのままゆるやかにカーブしているのも開発前の地形を想像させますね。

梅林:そうなんでしょうね。うん、等高線どおりのカーブですね。いいな。

―市営住宅を通りすぎると…。

梅林:なんだ、あれ。薬師寺がある!

―幼稚園でしょうか。

梅林:ちょっとちょっと、実にいいな。幼稚園の母屋がおそらく八角形の建物で、法隆寺の夢殿的なんです。で、夢殿なら屋根の上に宝形が乗るんだけど、ここは薬師寺の塔の上にある相輪が乗っかってるんですよ。折衷建築なんだけど、なかなか面白いなぁ。

土井:京都の幼稚園は仏教系統のところが運営してることが多いので、そのせいかもしれませんね。

梅林:幼稚園の名前を見るとたしかにそうだ。これはいいのつくった!

―通っている園児がどこまで意識してるかどうか。

梅林:10年後に修学旅行へ行って気づくんですよ。それでいい。

―思いがけない発見でした。

梅林:ニュータウンはやっぱり歩車分離が徹底していて、すごく歩きやすい。街歩きが好きで、仕事にもしているんですけど、車がほんとに困る。危ないし風景を閉ざすから。

―駅周辺に比べると格段に歩きやすくなりましたね。…福西公園に到着しました。

梅林:平らじゃない起伏のある芝生っていいですね。『水曜どうでしょう』のオープニングを思い出すな。

―あれは、札幌の公園ですね。

土井:実際、こういう地形を活かした芝生のほうがきれいなんですよ。平らにならしてしまうと、どうしても水たまりができて、そこだけ苔むしたりするので。

梅林:そうか、なるほど。おっ、河岸段丘を活かしたすべり台ですね。ニュータウンにはこれも多いんですよ。京都の観月橋団地には、伏見城の石垣跡の斜面を活かしたすべり台がありますね。“天下人のすべり台”と勝手に呼んでますけど。

土井:人研ぎ石のすべり台、割れてしまいがちなんだけど、ここはきれいに残ってるな。

梅林:…こっちの砂場には、越冬隊のベースキャンプみたいなのがある。何して遊んでるんだろう。

―何かをやりかけている途中なのか、謎ですね。

梅林:足跡が放射線状にのびてるのも気になるな。

―現代の遺跡はあるけど、目指すべき遺跡がないですね。

梅林:お、間違えました。福西公園じゃなくて福西遺跡公園でした。

 

迷う/崖に登るな/古墳公園/土地の履歴/小畑川

―洛西口駅からニュータウンまではスムーズでしたけど、ニュータウンに入ってから迷子です(笑)。

梅林:方向意識を失いますね。

土井:洛西ニュータウンのマスタープランをつくった上田さんは、過去の幾何学的な設計をやめて、迷うような街路にしたいとも言われてましたので、設計者の意図には合ってます(笑)。

梅林:ニュータウンに関係する文献をざっと読んできたのですが、後から駐車場がつくられてしまって、マスタープランを侵食するようなケースも多いみたいですね。

土井:そのへんも揺り戻しがあって、自家用車の台数が減ってきたので駐車場にしたところを、また緑地にする流れもあります。むしろ、だんだんマスタープランに近づいてるところもある。

―設計計画と現実の綱引きが続いているんですね。

梅林:ニュータウンのマスタープランというのは、よく考えられていると思いますよ。ただ、建築家の親切心や理想が大きなお世話になるところもあって。そういうところも今日は見つけたい(笑)。

―さて、福西公園に隣接してURの福西公園団地です。

梅林:めちゃくちゃかっこいい建造物がありますね。

土井:団地の給水塔ですね。給水塔は使わなくなってきていますけど、ここはまだ現役。福西公園団地が洛西ニュータウンの中でも最後にできた団地なんです。

梅林:なんだなんだ、向こうの方にも面白い建物が見える。ガンダムのスペースコロニーみたい。

土井:洛西ニュータウンは中央部に高層の団地をたてて、周辺にいくに従って低層になる設計です。向こうが中央部ですね。

―と言ってるうちに、遺跡公園が見えてきました。なんと、さっき通った幼稚園の真裏だったんですね。

梅林:お、「崖に登るな」! この看板、僕の人生に対する挑戦状ですね(笑)。

―ここは案内に従って、階段から登りましょう(笑)。

梅林:他のニュータウンにはない特徴として、洛西には古墳があるんですよ。

土井:洛西に古墳があるなんて、恥ずかしながら知りませんでした。団地は軍用地跡に建てられることも多いので、防空壕跡とかは結構あるんですけど。

梅林:うん、これはいいな。かつて、石棺がここに埋葬されてたんですね。奥に鏡石。石は地元のを使ってるみたいだな。説明板に「附 縄文時代遺物包含層」とありますから、縄文人が住んでいたところに古墳がつくられたわけですね。おそらく、小畑川を望むような意識でこの場所、河岸段丘の上に古墳をつくった。そして、現在の団地も小畑川を見下ろすようにつくられたと。歴史が重なりあっている。土地の履歴がぶ厚いなぁ。

―梅林さん、そのポーズはなんですか。

梅林:埋葬ごっこ(笑)。いやぁ、迷いながらも来る価値ありましたね。

―では、次は…。

梅林:ラクセーヌへ。小畑川をセーヌ川に見立てて、ラクセーヌと名付けられたと言ってる住民の方がいましたけど、ラクセーヌには高島屋もある。それも見てみたい。

―古墳公園から伸びる橋が、まっすぐラクセーヌに通じてますよ。

梅林:古墳から徒歩1分でラクセーヌ。すごい世界観だ。面白いなぁ。

梅林さんとの「さんかつ04 ニュータウンの中心で」
ようやく洛西ニュータウンの心臓部、ラクセーヌの前までたどり着きました。だけど、これがゴールではありません。ラクセーヌをあちらこちらと探索した後、さらに梅林さんが気になるというタウンセンターの方へ。洛西ニュータウン探訪はまだ続きます。


散歩と観察とは

デザイナー、アーティスト、建築家といった、独自のまなざしを持つ方々といっしょに町を歩きます。お題は、パブリックなモノやコト。公園、ベンチ、駅、図書館、路地、空き地、看板などなど、その観察眼はどこへ向けられるでしょうか。