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梅林秀行(京都高低差崖会)

04 ニュータウンの中心で

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福西古墳公園から小畑川にかかる橋を渡ると目の前にラクセーヌが見えてきます。洛西ニュータウンの中心に設けられたショッピングセンターです。

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河川広場/街を見る3点セット/ラクセーヌで高島屋/温泉とボーリング場

梅林:このあたりの地形は、小畑川が削りとってできた谷なんです。橋の上から見ても、川があって、河岸段丘があって、その上にラクセーヌですね。

―地形がはっきりとしている。鴨川の三角州のように、小畑川の上が整備されています。

土井:マスタープランをつくった上田篤さんは、川の中州を広場に見立てていたようです。だけど、河川局との調整が必要で、自由にはできなかったと。

―広場っぽくはなっています。

梅林:今の僕のテーマが、広場、公園、盛り場の3点で街を見ること。洛西ニュータウンにそれがあるとしたら、ラクセーヌだろうなという予想を持って、ここへ来ました。それにしても、小畑川は水もきれいでいいですね。

―では、ラクセーヌの中へ。

梅林:まず高島屋を見てみたい。あの高島屋の空気があるんだろうか…ああ、食料品も1階にあるんですね。ちゃんとデパ地下っぽい。高島屋の中で望まれるものだけが凝縮して入ってる感じ。これは楽しい。

土井:郊外型デパートなりに進化してますね。

―ラクセーヌには温泉もあるみたいですよ。

梅林:行ってみましょう! ホテルもあるんだ。なるほど。

―(ラクセーヌ内を歩きまわって)どうでした? 念願のラクセーヌ。

梅林:広場と道路を兼用したスペースが作られていたりして、しっかり設計されてるなと思いました。ただ、盛り場がないのが…。

―居酒屋らしき店はひとつもなかったですね。

梅林:オープンカフェや露天もなかった。ボール遊びもできない。もったいない。

土井:少しずつやり始めてるんですけどね。

―でも温泉とボーリング場があるのは発見でしたね。

梅林:ワンストップですべて集まってましたね。

―この先は…。

梅林:次は、西側に少し気になるY字路があるので、そっちを見に行きましょうか。

―初めての洛西ニュータウンなのに、やっぱり下調べが万全。そして、見てみたい場所がY字路なんですね。

梅林:いやぁ、でも、ニュータウンって平面地図で見て判断してしまいがちですけど、こうやって実際に歩いてみると立体的で高密度ですよね。当たり前のことですけど。もっとマスタープランや計画を歩きながら感じられるかと思ったけど、まだまだ圧倒されてます。冷静に見て整理できるような状態じゃない。

 

境谷公園のベンチ/複雑なY字路/ニュータウンのエッジ

―梅林さん、普段の散歩ではゴールを決めて歩きますか。

梅林:スタートとゴールだけは決めます。じゃないと、どこまでも歩いて帰れなくなってしまう(笑)。あとね、ゴールを決めておくと途中でどんな寄り道しても、道路選択の必然性が生まれるからいいんです。

―道を選ぶ基準ができるんですね。

梅林:そう。土地に誘われるっていうのがいいんですよ。必然的に選ぶ道路って歴史的にそう通ってほしい道だったりもするので。

―今日もそういえば、洛西口駅から歩いたのは、自然とそんな旧道でしたね。散歩の時間や距離も決められてますか。今日はもうかなり歩きましたけど。

梅林:いつもは1万歩くらい。まだまだ行けるけど、ちょっと休憩したいな。

―境谷公園がちょっと高台になって、いいベンチがありますよ。しばし休憩しましょう。

梅林:おぉ、いいとこ、いいとこ。やっぱり斜面に芝生をはるのっていいな。きっと、もとは竹やぶだったと思うんだけど、徹底的に植生をつくりかえてできた、人工的な景観なんですね。

土井:ニュータウンができた頃は、とても寝転べないような状態だったと思うんですけど、長年かけてすっかり芝も定着してますね。この公園に面した境谷東団地が最も背の高い団地で、当初は憧れの団地でした。

―洛西ニュータウン40周年のポスターがラクセーヌに貼ってありましたけど、今はどんな状況なんでしょう。

土井:一時、人口が落ちこんでいましたけど、また近ごろでは人が増えてきているんです。その理由ははっきりわからない。

梅林:少子高齢化でやばいって聞いてたんですけど、ここまで歩いてみてそんな感じはしませんね。

土井:最近は、住まい方のリテラシーも上がってきて、誰もが新築を追い求めてないですね。洛西のような成熟した街で、住み継いできた建物を選びたいという人も増えてきました。ニュータウンができた頃は、自然を削ってという声もありましたけど、今になってみれば、むしろニュータウンの中に自然が残っているんです。来るたびに、それは実感します。

梅林:こんなにも気軽に人が入れる自然の場所ってなかなかない。まさに現代型の里山ですよ。

―ニュータウン内の高低差もかなりありますね。

土井:昭和30年代初期に開発された土地は、まだ重機も使えなくて土地の地形を活かさざるを得なかった。その後、重機が入って土地をまっ平らにならす開発の時代がきますけど、それに対する反省もあって、洛西はかなりもとの地形に則してマスタープランがつくられたんですね。

―では、梅林さんが気になるというY字路へ。境谷中通と竹の里北通の交わるところですね。

梅林:立体交差なのか、複雑なプランだなこれ。

―Y字路の車道も府営住宅に続く敷地も歩道橋もあって、複雑なことになってます。

土井:地形のすり合わせがかなり難しかったところでしょうね。平面のプランをどう現場に落とし込むか、最後は土木の仕事なんです。これはなかなか大変だったでしょう。

梅林:地図から想像してたのとはまるで違いました。

―そして、さらに奥へ進むとニュータウンの雰囲気もまた変わってきました。

梅林:うん、郊外ぽくなってきた。そうか、向こうの方に見える街はニュータウンの外側ですね。

土井:そうですね。ニュータウンの端には低層の建物が増えて、中層の団地がぽつぽつとアクセントで入ってます。

梅林:グラデーションなんですね。裾野のようになっていく。で、ニュータウンの外側は田んぼで切れていたはずが、外側から開発された住宅地がスプロールで寄ってくるから、もうその境界もだんだんわからなくなって。

土井:そうなんです。

梅林さんとの「さんかつ05 タウンハウスのメッセージ」

スタートから2時間半。実は、すでに歩数も1万歩を軽く突破していました。次回、ついに最終回。最後に眼にしたのは、なんと胸が熱くなるような文章でした。


散歩と観察とは

デザイナー、アーティスト、建築家といった、独自のまなざしを持つ方々といっしょに町を歩きます。お題は、パブリックなモノやコト。公園、ベンチ、駅、図書館、路地、空き地、看板などなど、その観察眼はどこへ向けられるでしょうか。