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梅林秀行(京都高低差崖会)

05 タウンハウスのメッセージ

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ため池のある大蛇ヶ池公園を通り抜けて、竹の里センターへ。洛西ニュータウンには、4つの学区が設けられ、そのひとつずつにエリアの核となるサブセンターが置かれています。そのひとつが、竹の里センターです。

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大蛇ヶ池/ニュータウンの医療モール/こんにちは!/サブセンター

―大蛇ヶ池公園、広々としています。

土井:大きな石が転がってますね。造成のときに出たのを持ってきたのかな。

梅林:用水路があって、一度池にためて、水門から放水して小畑川に流す。明治時代の古地図にも載っているので、このあたりの谷の水田を潤していたため池でしょうね。関東で言うところの谷津(やつ)という地形。

―広々とした公園ですが、今日は人の気配がありません。公園の向こうが竹の里センターです。

梅林:こっちには病院が集まってますね。82年オープンと書いてあるから、ニュータウンの計画に組みこまれていたわけか。

土井:すでに医療モールがあったということですね。

梅林:…こんにちは!

―出発時から気になってましたけど、梅林さん、道ですれ違う人と挨拶しますよね。

梅林:これ、街歩きの必需品なんですよ。お互いに気持ちよく。あと、僕は大丈夫な人間ですよ、怪しくないですよっていうサインです(笑)。

―大事なことですね。

土井:赤いリュックサックも梅林さんのトレードマークですね。

梅林:そうです。ちょっと本気のときはこれで。

土井:ずっと同じのを長く使ってます? 家内が梅林さんのファンなのでいろいろ聞いてきてくれって(笑)。

梅林:赤リュックはメーカーを変えながら、これで3代目。赤じゃなくてもいいんだけど、みんな納得してくれないんで。実は、僕の本体はこのリュックに入ってるので、その司令に従って動いてるだけなんですけどね(笑)。

―操作されている(笑)。リュックには何が入ってるんですか。

梅林:iPadとお風呂道具、野帳(フィールドノート)、あとは読むかもしれないと思って入れてる本が何冊か。たいてい読まないんだけど。

―と言ってる間に竹の里センターへ到着です。

梅林:スーパーはもうないんだ。

土井:小さなスーパーがありましたが、なくなってしまいました。結果的に、みんな、さっきのラクセーヌまで行ってしまうということなんです。サブセンターに置くような、ちょうどいいボリュームの施設が一体何なのか、むずかしいんですね。

梅林:ひとり暮らしのお年寄りだとラクセーヌまで歩くのは遠いだろうな。

土井:そうなんです。それでNPOが中心になって、互助会の形で買い物支援もなされています。

―みなでお昼ごはんを食べる昼食会なども行われているようです。

土井:団地だけでなく、周辺に暮らす方々が共同で利用されています。

 

タウンハウスの高低差/建築協定/住む人の喜びと誇りを永遠に

―けやき並木を通って、西竹の里タウンハウスの入り口に到着しました。梅林さん、どうしてこちらを見てみたいと思ったのですか?

梅林:「住まいのまちなみコンクール」でも国土交通大臣賞を受賞していたり、住民の方々の管理が行き届いてると聞いていたので。

土井:自治会がとても熱心で、かなりがんばってこられたんですね。住民どうしで話し合いを進めながら、住宅地の中には車を通さないようにしたり。

梅林:なるほど、駐車場から住宅地に高低差をつけて車が入れないように。認知レベルでも防犯効果がありそうですね。…タウンハウスは、玄関と玄関、庭と庭が向き合ってるんですね。出入りするたびに顔を見合わせることになると。立方体に少しリズムをつけるようなデザインが時代を感じさせますね。

―集会所の方へ。

梅林:「建築協定」、これが大事なわけですね。

―というのは?

土井:このエリアの中だけで通じる約束事を決めるんですね。住民が入ってから建築協定をつくるのは、かなり意識が高くないとできることではないんです。

梅林:景観条例の先駆例みたいな感じですね。集会所の前には、マニフェストがありますね。…これは心に訴える文章ですよ、グッとくるなぁ。

土井:高度成長の終わりは見えてきたけど、まだまだ未来は明るいんだという核心があった時代ですよね。今は、この力強い文体がなかなか書けない。

梅林:書けませんね。留保が多すぎる。その分、多様性に対して配慮できる時代になったということですけど、でも、この一本気のある文章は感動的。

土井:確かに、これが洛西ニュータウンの象徴的な言葉かもしれません。ニュータウンができた頃の思いが詰まっています。

―洛西口駅からずっと歩いてきて、導かれるようにたどり着いたタウンハウスでこの文章。まさにフィナーレですね。

土井:ただ歩くだけではなく、いろんな話を聞きながらだったので、今まで見えてなかったものがたくさん見えてきました。梅林さん、本当にありがとうございます。

梅林:いい散歩でした。でも、まだまだ洛西ニュータウンの一角しか行けてないんですよね。まだまだ歩かないと(笑)。

―梅林さんの初めての洛西ニュータウン散歩、ここに記録できてよかったです。

取材・文:竹内厚 写真:原祥子


散歩と観察とは

デザイナー、アーティスト、建築家といった、独自のまなざしを持つ方々といっしょに町を歩きます。お題は、パブリックなモノやコト。公園、ベンチ、駅、図書館、路地、空き地、看板などなど、その観察眼はどこへ向けられるでしょうか。