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山納洋(大阪ガス近畿圏部 都市魅力研究室/Walkin'About)
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長田~長田神社~高取山 〈神戸市〉

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山納さんと長田のまちを歩きます。長田駅の北側へと進めば、早くも六甲の山裾という印象。ゆるやかな坂道がはじまります。

#02

参道商店街/付け替えられた河川/山と海

―菅原市場だったあたりから、番町を通り抜けて、長田駅の北側へとやって来ました。

山納:古い祠、浄土真宗の寺院、市営団地、そしてたくさんの喫茶店とお好み焼き屋がありましたね。

―かなり建て替え工事が進んでいるようでした。空き地も多くありましたし。

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新湊川ぞいに位置する六番町は、韓国系の方が多く住まれています。あっ、看板が出ているそこのお好み焼き屋さんには入ったことがあります。大きなテーブルをみんなが囲むようなつくりで、さすがに僕みたいなヨソものがいきなり入って行くとぎょっとされましたけど、最後は「またおいで」って言ってもらいました。

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―長田神社前商店街に到着。参道が商店街にもなっているんですね。

長田神社は1800年以上の歴史があるとされています。いつから参道として栄えているのかわかりませんけど、和菓子屋さんが何軒もありますし、かなり古くからの参道でしょうね。

―ここまで歩いてきたまちとは、雰囲気がまたがらっと変わりました。長田神社の影響でしょうか。

それもあるかもしれません。このあたりは、商店だけではなく病院や整骨院がとても多いんです。高齢化していることが伺えます。

―店と病院が集積しているからか、人通りが途絶えることなく賑やかです。…川が流れていますよ。

これが新湊川。もともと湊川として、六甲山から海に向かって、まっすぐ新開地を抜けて神戸港へと流れていた川なんですが、造船という根幹産業のある地域を氾濫の多い河川が通るのはよくないとして、1901年、東から西へと流れるように付け替えられたものです。

―ほぼ90度近くも流れを変えたんですね。* しかも、ものすごく川床が深い。

6.5mと書いてあります。それでも、豪雨のあとは一気に増水するようで、1998、99年にはもう少し上流の荒田町で河川があふれて、商店街が水びたしになりました。

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―川床をこんなにも深く掘り下げても増水するんだ。山との距離が近いからでしょうか。

そうですね。とにかく、六甲の山々がまちに近いということは、神戸のいろんな面に影響を与えています。川がすぐに増水するのもそうですし、平坦な土地が少ないので、住む土地が少ないことにもつながっています。近代に入って、神戸の産業が栄えて増え続ける人口をどこに住まわせるのか、大きな問題だったようです。

―山と海の近さは神戸観光のウリですけど、都市開発の面ではそれが難しいところでもあったんですね。…みんなで新湊川をのぞきこんでいると、周りのひとも何かあるのかと集まってきちゃいました(笑)。

*新湊川の変遷は、兵庫県のサイトにとてもわかりやすく図示されています。
→ https://web.pref.hyogo.lg.jp/ko05/ko05_1_000000016.html


神社の存在感/年末の標識/坂道に広がる住宅街

―長田神社の鳥居が見えてきました。

山納:境内には周囲が6m以上ある、大きなクスノキが生えています。

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―揺るぎない印象ですね。

何百年という樹齢でしょうから。こうした神社に来ると、界隈の昔の様子をイメージをするのも難しくありませんね。神社にお参りをして高取山へ向かいましょう。…境内の裏手にたくさんの標識が保管されているのを見つけました。年末年始に一気に使うんでしょうね。

―これだけの本数を見ると、年末年始には大勢の人が参拝される神社だとわかります。…また川が流れています。この川沿いの道は、今日歩いた中で一番気持ちがいいですよ。

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苅藻川(かるもがわ)です。これはもとからある河川なので、自由に蛇行していますね。

―直線的な新湊川に比べると違いがはっきりしています。

だけど、やはり川底は深く掘ってありますね。神戸の労働人口が増えてきたときにどう対応するかという話を先ほどしましたけど、その答えのひとつがこのあたりにあります。高取山の中腹まで住宅地が広がっているでしょう。湾岸部で働く労働者が、山の方に住みはじめたんですね。

―駅より南側で見てきた、正方形の規則正しい区割りとは正反対に、こちらは道も入り組んでいますね。

だけど、平坦な土地ではなんとかやりくりして、まだ碁盤の目が保たれています。地図で見るとよくわかるのですが、山の斜面に入ってくるとそれが維持されなくて、無秩序になってくるんですね。

―だんだん急な坂道が増えてきました。周りが宅地なのでそんな感じはしませんけど、実はもう山なんですね。

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この先に神戸珈琲の本店があります。2階が喫茶室になっています。

―瀟洒な建物ですね。このあたりの一角は高級住宅街の趣き。

ですね。ここより登った先にまだ文化住宅が広がっているのが高取山の特徴です。

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毎日登山/山道で祀られたもの/走って登る

―いつの間にかずいぶん登っていました。神戸のまちと海まで見渡せます。住宅街の間を抜けていく道が登山道を兼ねていて、いわゆる山道っぽさがないので気づきませんでした。

山納:高取山には毎日登山という習慣があって、山へ毎日、登っている方たちがいます。山筋に沿って4軒のお茶屋があるのですが、そこまで登ってハンコをついて帰ってくるんですね。それを毎日されている。

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―ほんとに毎日登るんだ。

お茶屋ごとに登山会があって、年間に何回登ったという表彰などもされています。あとは、みんなでバスツアーへ行ったりとか。

―健康的な集まり!

一方で、高取山はいわゆる“神名備”、神体山でもあるんですね。

―山そのものがご神体だと。

六甲山系にありながら、独立峰として海からもよく見える山なので、信仰の対象となったようです。いまは山頂に高取神社がありますけど、山道に沿って個人が祀ったらしい祠や神さまも数多く見られます。

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―山道って、まちの道路以上に公共性が高いというか、誰のものかわからない感じがありますね。そういえば、山納さんはトレイルランニングもされていると聞きました。

趣味ですよ。4年くらい前から朗読劇やラジオドラマをつくる仕事もしているのですが、そこで加藤文太郎という、高取山の麓にも住んでいたことがある登山家のドラマをつくったことがあって、その話を聞いてると自分でも六甲縦走とかやってみたくなりました。だけど、あまり時間もないので、走ることにしたんです。

―時短が理由ですか! 山道を走るってただただしんどそうですけど。

最初は苦しいとばかり思うんですけど、帰りは絶対に下りだから、すごく爽快に走ることができて、勘違いするんですね。自分はすごいんじゃないかと(笑)。

―大リーガー養成ギブスみたいな話(笑)。

そんなものかもしれません。高取山は下の茶屋から山頂まで30分くらいの山ですけど、ぼくが一度急いで登ってみると9分でした。

―めっちゃ走ってますよ、それ(笑)。

トレーニングだと思ったら物足りないくらいの山なんです。だけど、毎日登るにはちょうどいいんでしょうね。…さあ、お茶屋が見えてきましたよ。高取山ではいちばん下にある「清水茶屋」です。

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→ 山納洋さんとの「さんかつ#03」は6月3日更新予定
高取山のお茶屋は、実は一大レジャーランドでもありました。そして、驚異の輪投げ文化を目撃!!


散歩と観察

デザイナー、アーティスト、建築家といった、独自のまなざしを持つ方々といっしょに町を歩きます。お題は、パブリックなモノやコト。公園、ベンチ、駅、図書館、路地、空き地、看板などなど、その観察眼はどこへ向けられるでしょうか。