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山納洋(大阪ガス近畿圏部 都市魅力研究室/Walkin'About)
around
長田~長田神社~高取山 〈神戸市〉

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2時間の制限時間で行っている「散歩と観察」。
清水茶屋でちょうど時間となりました。山頂行きはあきらめて、最後に山納さんからまち歩きのツボを教わりました。

#04

物足りない観光地/まちの見巧者/芝居のようにまちを

―今回、いっしょに散歩してみて、山納さんの散歩術、まち読み技術はどこのまちでも通じるものだと思いました。実際、山納さんが主催する「Walkin’About」*では、名前は聞いたことがあるけど、なかなか足を踏み入れる機会のないまちへ行かれてますね。

山納:この1年間で「Walkin’About」として、兵庫は新開地、川西、姫路、船坂。大阪は八幡屋、築港、三国、庄内、住道、野崎、鴻池新田、四條畷、瓢箪山、尾崎。京都は大山崎とまわってきました。

*Walkin’About 日時と集合場所だけが決まっている、自由参加のまち歩き企画。参加者はそれぞれ自由にまちを歩いて、90分後に再集合。各自が見聞きしたことをシェアしあう。

―今日集まった高速長田もそうですけど、決して観光地ではない。

いわゆる観光地に観光客として足を運ぶというあり方が何か物足りないような気がしていて。ぼくは90年代、OMS(扇町ミュージアムスクエア)というところでずっと演劇に携わってきたのですが、芝居でもおもしろくないものがたまにありまして、だけどそれをただ否定しても生産的じゃないので、ひたすらおもしろいところを見つけようとしてきたんですね。そしてそれは、たいてい見つかります。作り手の意図が見えるとおもしろくなるんです。だから、各停しか停まらないような地味な駅だったとしても、そこでみんなで降りて、おもしろいものを拾ったもん勝ちという勝負をするのが「Walkin’About」の醍醐味でもあります。

―与えられるものよりも、自分で見つける方が楽しい。

自分の“まち読み能力”が問われます。なので、まちを読むリテラシーが上がれば、どんなまちでも小さな観光地に変わっていく。ただし、お客さん気分ではまったく楽しくないでしょうね。

―観光地のような、ここを見ればOKという正解がありませんから。

受け身ではなく、自分からまちや環境に働きかけるとだいぶおもしろいということだと思います。

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―「Walkin’About」は、初対面のひとともまちの見かたをシェアするのがおもしろいところですね。

大きく言えば、参加者には2パターンあります。この風景、このお店がいいってまちの魅力を拾うひと、ここが不便だとかいったまちの課題を探してくるひと。

―まちを見る眼もひとそれぞれ。

「Walkin’About」は、90分という制限時間でまちを見るので、決して自分ひとりでは見きれないんですね。だから、他の参加者の発見が興味深く受け入れられる。神戸の新開地でやった際には、何をどうすればいいかわからなくて、立ち食いうどん屋ばかり4軒ハシゴした参加者がいました。さすがにお腹がパンパンになってましたけど(笑)、彼が発見したのは、立ち食いうどん屋は必ずパチンコ屋の前にあるということでした。

―なるほどー。

新開地は労働者のまちだから、立ち食いが多いのかとくらいにしか思ってなかったけど、パチンコとも結びついていた。店を構える側にはそんな作為があったのかと。思いもよらない発見を、誰かが見つけてくるのがいいんですね。

―最初から答えがわかっているものでは決してない。

“見巧者”といえば、芝居などの舞台をうまく見るひとのことなんですが、たぶん同じようにまちも深く見ようと思ったら見れるものなんです。演劇だと、ある登場人物が出てくることにも、ひとつのセリフにも、劇作家や演出家の意図や伏線がありますけど、まちでも同じ。1軒の家をひとつとってみても、何らかの作為があるはずなんです。

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―そうなったという理由は絶対に何かありますよね。

そうです。芝居を見るように、まちを見るというんでしょうか。90年代に平田オリザさんらから始まった「静かな演劇」という演劇の手法があります。病院の待合室や公民館の一室のような場所を舞台に、普通の会話が淡々と続いていくんですけど、そこから何かがあぶり出されて見えてくるような演劇なんです。これって、町を見ることそのものでもあるんですね。そう気づいてからは、芝居を見ること、まちを歩いて見聞きすることが、自分の中でパラレルというか、違いのないものになってきました。

―そうか、 喫茶店で耳をすましているだけで、実は芝居がはじまっている!

しかも、これが芝居だと考えると、自分がそこに関われもする、自分が役者になれるんです。自分がなにを聞きだすかで相手のセリフが変わってきますから。

―まち歩きは、イチバンの参加型演劇だと。そう思えば、見知らぬまちへもどんどん足を運びたくなりますね。

そうなんです。必ずしも名所旧跡があるわけじゃないけど、自分から働きかけて、まちを見たり、まちに関わったりする。もっともっと多くのひとにそうすることのおもしろさが広がっていくことを、どこかでぼくは夢見てるんですね。

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*「Walkin’About」の開催情報は、山納さんが在籍する「大阪ガス近畿圏部 都市魅力研究室」のサイトにて。→ http://www.toshimiryoku.jp/

文:竹内厚 写真:バンリ


散歩と観察

デザイナー、アーティスト、建築家といった、独自のまなざしを持つ方々といっしょに町を歩きます。お題は、パブリックなモノやコト。公園、ベンチ、駅、図書館、路地、空き地、看板などなど、その観察眼はどこへ向けられるでしょうか。